五十肩の脅威

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今回のテーマは”五十肩”です❗️

普段臨床でよく遭遇する”五十肩”

実は結論から話しますと…

たった1回の治療で完治…
なんてことは”五十肩”ではありません😵

あなたは本当に理解して治療していますか??

今回は、”五十肩”について深く学べる内容を用意しています。

学術的な立場からの考察と臨床で使える内容をお伝えしますので
この機会にしっかり学びましょう!

実は、知っているようで知らない
”五十肩”の歴史📗

”五十肩”の語源は、江戸時代に発刊された福山藩の漢学者大田全斎によって編集された「俚言集覧」の「凡、人五十歳ばかりの時、手腕骨折痛む事あり、程過れば薬せずして癒ゆるものなり」からである。俗にこれを”五十腕”とも”五十肩”ともいいます¹⁾。

一説であると江戸時代の50代は大変長生きしたと考えられ、五十肩を”長寿病”と呈したものも存在しています。

これらを見ても、数百年前から苦しめられているにも関わらず
今でも治療方法が分かっていない疾患だということに驚きです😵

どんな問題が生じやすいのか?

結滞動作ができない…
肩をあげるときに激痛が生じる…
腕をあげることができない…
痛みに対してすごく敏感になる…
夜間時痛がある…
歯を磨く・電車でつり革を掴む・着替える・洗濯物を干すときに…

まだまだたくさんあります。

要するに動くだけでも肩が痛むという
大変やっかない疾患です。

どっちが正解🤔
五十肩=肩関節周囲炎❓

最近ではよく聞く”五十肩”

でも、医学業界では”肩関節周囲炎”と呼ばれることを多く聞きます。

これってどんな病気なの??

少し詳しく説明します。

”肩関節周囲炎”は、1872年にDuplayが肩関節の疼痛と運動障害を主体とする症候群に対して命名したそうです。

これら”五十肩”と”肩関節周囲炎は”、昭和初期に神中が「五十肩はDuplayの言うように肩関節周囲炎というのが正しいが、病理解剖学的研究が不十分で十分解明されていない疾患であるので、しばらくは五十肩という通俗的な病名によって記載する」としたことが考えられています。

でもこれでは、熱がある人に対して風邪ですって言うのと同じ感じがしますよね(笑)

そのため、今でも五十肩=肩関節周囲炎と呼ばれているそうです😵

実は、五十肩は整形外科医からしてもとても曖昧な表記なのです(・_・;

では、
五十肩ってどんな人になるの?

五十肩になる症例は、軽労働者や婦人に多く、
栄養状態は平均以下の人になりやすいです。

しかも情緒不安定で依存心の強い人などに多発する傾向があります💦

局所的な循環障害が助長されると
腱板筋群や大腿二頭筋長頭腱と関節滑膜などの癒着が生じやすく
肩関節周囲の筋力が弱くなり、周りの組織が萎縮することで五十肩に繋がります。

そのため、80歳の人でも五十肩と言われる
なんだか不思議な現象が起きているそうです😂

高確率で
猫背の方が”五十肩”になりやすい

猫背が原因で肩の痛みってなりやすいの知ってますか?

松本は、五十肩の初発像である上腕二頭筋長頭腱腱鞘周囲の炎症の原因こそ、胸椎の後弯増大により重心線から離れた上肢を引き寄せるために生じる、広背筋、上腕三頭筋と上腕二頭筋の過剰な収縮による肩甲骨の内下方と肩甲上腕関節の関節軸の前上方へ移動することで生じる上腕二頭筋長頭筋腱の機械的圧迫の増加で生じると言っています²⁾。

持続的な姿勢が肩に負担になって
痛みが生じやすくなることは
肩の痛みだけでなく姿勢の調整も必要だとは思いませんか?

現在の東洋医学および西洋医学において
”五十肩”の発生機序が明らかにできない理由

これだけ諸説や論文があるにも関わらず

これまで原因が分かっていません😓

その理由として…

・筋肉や筋活動の影響が見逃されやすい

・肩関節の機能が複合的であり、一概には断定できない

大きくはこの2つがあります。

筋肉や筋活動に関しては、まだまだ分かっていないことも多く
私たちセラピストが活躍できる場所です

下に対処方法を掲載しています

ぜひ使ってみてください💫

ここで僕たちがしている
五十肩の方がどんな治療経過でよくなったのか?
痛くて痛くて仕方がない方に対しての症例報告です。

==================

50歳代後半の女性です。

農家に20代で嫁ぎ、
近所のスーパーを掛け持ちしながら
農業を行っていました。

肩に異変があったのは、2ヶ月前です。

夜寝るときも朝起きるときも痛くて痛くて
眠れない日々が続きました。

肩を冷やしてもお湯で温めても痛みが良くならず
痛みが3日も続いたため病院へ行きました。

病院の医師からは…
「レントゲン上では異常はないですね。
五十肩で間違いないでしょう。」
と言われました。

「痛くても肩の運動をして下さい」と
医師より言われ、五十肩に対する番組や
本などを買って毎日行いました。

でも、痛くて痛くて変わらない日々が
1ヶ月と経ちました。

前に比べると痛みは減っていたものの
大きな変化はないので薬に頼る日々が続きました。

それでも肩が痛く
近所の整体院に通いました。

すると、驚くことにあんなに痛かった
肩の痛みが気にならない程になりました。

原因はなんだったのか?と
治療院の先生に尋ねると

意外な言葉が帰ってきました。

「その痛みは筋肉が影響しています」と
言われました。

あんなに肩を動かす練習も頑張って
筋肉が影響しているなんか
考えもしなかったので驚きました。

今では、肩をあげるときも痛みが落ちつき
肩が詰まる感じも減って楽になりました。

==================

ではなぜ改善したのでしょうか?

”五十肩”に対して
見るべきポイント🖕

①時期 ②姿勢 ③筋肉のこわばり

この3つをまず評価します‼️

まずは①時期では、急性期、慢性期、回復期に
分けて考えます。

一般的に急性期は、
発症〜2週間程度です。

急性期では、夜も眠れないくらいに肩が痛い”夜間痛”が生じます。

じっとしていても強烈な痛みが生じます。

確実に言えることですが、それは炎症が起きています。

そのためこの時期では痛みを和らげる治療を行う必要があります。

むやみやたらに動かしてしまうと更に悪化するため
この時期はとても大切です。

でも実は、この炎症が起こるというのは
身体が”治ろう”としている反応なんです!

ここで注意⚠️をして欲しいのは、

五十肩の痛みが辛いからと言って
注射や飲み薬を飲み続けたら、回復が遅れてしまいます。

本来、炎症というのは身体の組織が異常だと認識し
それを治そうとするため起きています

炎症=治すための準備

飲み続けてしまうとその正常の反応が阻害され
回復がずっと遅くなります

我慢できないような痛みの段階時は仕方がないですが、
ずっと飲み続けるのは考えものです。

慢性期から回復期では
急性期のような痛みから脱出し”肩の動き”が行えてきます。

ここで注意して欲しいのは

いきなり肩を動かすと
すぐに肩を痛めてしまいます

一番最初に行うことは筋・筋膜を緩めることです

例えば、半冷凍しているお肉を曲げる伸ばすことをすると
溶けていない場所が硬く組織がミシミシします

肩にも同じことが言え
組織が硬くなると循環不良が生じ筋肉が硬くなります

そうすると本来の柔軟性が失われ、筋肉が骨や靭帯を引っ張り
痛めつけることになります

そのため私たちがすることは
まずは筋・筋膜を緩める、次に肩甲骨→肋骨→鎖骨→肩の順番に動かす

この流れを常に意識してください❗️

あとで筋・筋膜の緩め方についてはご紹介しますね☺️

②姿勢を見るでは、まず猫背かどうか評価して下さい!

スポーツ用品を販売するエバニューは、全国の20〜59歳の男女500人を対象に、姿勢に関する意識調査を行いました。すると、最も自覚が多かったのが”猫背”であり57.8 %の人が自覚していました。

猫背は普段短な人にも多いと思いますが、これが結構厄介です。
前述した通り、猫背は五十肩の痛みで多く生じる上腕二頭筋腱長頭に負担がかかりやすく肩を上げ続けると炎症が生じます。

普段からこの人はどんな姿勢なのかを判断することもセラピストとして大切なことです。

③筋肉のこわばりを確かめるでは、圧痛を感じる部位をみて下さい。

特に、広背筋、肩甲骨の内側部です。

ほとんどの方に圧痛が生じやすく肩甲骨や肩の動きを制限する因子となっているため
確認してみて下さい!

では、どんな治療を行えばいいのか?

私たちが最も実践して効果がある二つの方法をお伝えします。

一つ目は”菱形筋”
特にTh1〜4番を緩める方法です。

どんな場所か?
肩を上げるための土台となる場所です。

肩関節は必ず肩甲骨の動きも伴って動きが成り立ちます。

そのためには、まず肩甲骨の動きをサポートする必要があり、
特に活躍するのが菱形筋になります。

この肩甲骨内側面では、僧帽筋中部や下部繊維、脊柱起立筋群、菱形筋など
あらゆる筋肉がこの肩甲骨内側面についています。

臨床で五十肩を多く見る時に必ずと言ってここが硬結しています。

では、気になる治療法は‼️👀

まず、①うつ伏せになって下さい(難しければ横になって下さい)

ここで触る場所は、②肩甲骨の下角です(肩甲骨の一番下の突起)

そこから背骨に沿って突起を確認します。それがTh7番目に当たります。

そこを目印にTh4番を探し
薬指から人差し指の3本を③Th1から4番に添えます(緩めるのを確認するため)

もう片方の手で④肩甲骨の上角を触って下さい。

ここは、肩甲挙筋や僧帽筋上部繊維などが付着し、
頭頸部、肩甲骨の動きにリンクしているため、
ここを緩めるだけでもう片方で触診していた場所が緩みやすいです。

これを⑤圧痛が無くなるまで振幅刺激を行いましょう!

あまり強く押し付けると痛みが強くなるため、振幅刺激を与える程度で大丈夫です。

また、肩関節が痛いと言われるケースでは、
肩が痛い側に枕を敷くことや横になって行うことをお勧めします。

二つ目は”前鋸筋”

前鋸筋は肩甲骨を唯一外へ広げる筋肉です。

意外と知られてないですが…
五十肩のほとんどの方がこの筋肉が短縮しています。

短縮しているということは、十分な収縮が入らないということです。

では、どういう治療を行えばいいのか?

まず、①肩が痛い側の方を上にして横になります。

痛くない程度に肩を屈曲し、枕あるいは自分の膝の上に置き、十分リラックスさせて下さい。

股関節も曲げても肩の負担が減り、リラックスしやすいです。

②肩甲骨の外側から手のひらで覆えるほどの範囲を手のひらで押さえます。

③この場所を痛みが起こらない程度で擦るように治療をして下さい。

特に肋骨面に沿って行う方が筋膜が緩みやすいです。

よく短縮では、筋肉を掴む、伸ばす方法をお伝えしている先生が多いと思いますが、
そんなことでは前鋸筋の短縮は改善しません。

この場所では、広背筋や大円筋、小円筋、肋間筋、前鋸筋など多数の筋肉が連動している場所です。

まずは、筋膜を緩めることだけを考えましょう。
そうするだけで肩甲骨の動きは何倍も良くなります。

詳しくこの手技を聞きたい場合は、下で開催場所をお伝えしていますのでご確認ください。

どうしても痛みが取れない人は
食事が原因かも…😥

身体は食べたものから作られます。

ここで一つ最新の知見”糖化”がもたらす痛みについてお話しします!

そもそも糖化とは聞きなれない人が多いかと思います。

糖化とは、”糖質の過剰摂取”または急な”血糖値の上昇”が原因で、
余った糖質が体内にあるタンパク質と結合し終末糖化産物(AGEs:老化成分)に変性することを言います。

AGEsは、糖尿病や加齢により増加し、関節包などを構成しているコラーゲンを硬くします。

更に”RAGE(レージ)”と呼ばれるAGEsの受容体と結合し、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)を生み出します。これにより、組織は炎症を起こしやすい状態になってしまいます。

米国の整形外科医学アカデミーによると、
糖尿病患者の10〜20 %が五十肩に悩まされているそうです。

東京女子医科大学東医療センターの調査でも、
肩の痛い中高年の患者に血液検査をして
血糖値やHbA1cを調べると、
糖尿病と診断された割合が約3割に上るという結果となっています。

糖化→炎症→五十肩になりやすいことを覚えてといてください❗️

糖質(砂糖)を減らした方がいいと言っているのはこのためです。

というわけで、糖尿病のある人は五十肩の発症や悪化を防ぐためにも、食事や運動で血糖をコントロールすることがより重要になります。

五十肩の脅威☠️

まだまだここでは掲載していない
五十肩の秘密や原因など多くあります。

あなたが治療家であるならば
様々な原因やその病気について知らなければなりません。

ただ単に肩が痛いから、肩が上がらないから治療する
そんな考え方は今この場で捨てて下さい‼️

五十肩の原因が臨床上分かっていないからこそ
僕たちセラピストが臨床の中で答えを見つける
少しでも多くの人を助ける意思をもつ必要があると思います。

だからあなたが少しでも目の前の”五十肩”で悩む人たちを
救える技術を身につけて下さい。

今回の治療テクニックは、
JPR協会が主催している第1回ベーシックコースで実技をお伝えしています。

必ず、身につけておいた方がいい治療法があります。

今回の内容を読んで興味がある人は是非参加しに来て下さい。

参考・引用文献

1)信原克哉::五十肩の病態と治療-その歴史と概念-https://www.jstage.jst.go.jp/article/katakansetsu1977/19supplement/0/19supplement_19/_pdf(accessed March 7.2017.)
2)松本和久:日本における東洋医学に基づく五十肩の発生機序とその治療,日本東洋医学研究曽誌,第3巻,2017.
3)赤羽根良和他:夜間痛を合併した肩関節周囲炎の臨床的特徴,理学療法学,第44巻第2号,109〜114貢,2017.
4)林典雄:五十肩における疼痛の解釈と運動療法.関節外科.2011;30;26−32.
5)城愛理他:糖化ストレスを抑制して血管を若く保つ.基礎老化研究.37(3);33–35,2013.
6)小澤淳也他:終末糖化産物(AGEs)は固定に誘導される関節拘縮を悪化させる,
7)山田実他:肩関節周囲炎患者における機能改善とメンタルローテーション能力の関連性,理学療法学,第36巻第5号,281〜286貢,2009年.
8)酒井友実他:肩関節周囲炎に対する鍼治療の効果,日温気物医誌,第60巻4号,1997.

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